The Banner Saga: Factions
今春、Kickstarterで大成功を収めたThe Banner Saga。開発にあたるStoicは、The Banner Sagaの名前で複数のゲームを出す予定です。
The Banner Saga 1-3
シングルプレイ専用のターン制ストラテジーRPG。破滅を迎えた世界で、バイキング風の部族が苦難の旅を続ける。3部作の1作目が2013年にリリース予定。
The Banner Saga: Factions
同じ背景世界、戦闘システムを使ったオンラインゲーム。シングル版に先行して今年末に公開予定。多彩なユニットで6人の部隊を編成し、他プレイヤーと1対1で戦う。新XCOMのマルチと似た形式。ただ戦闘を通じ得られるRenownでユニットを成長させていくのが違い。プレイは無料だがRenownの直接購入もできる。シングル版開発資金の増強と同時に、システムなどがうまく機能するか試す場にもしたいとのこと。
現在、後者のThe Banner Saga: FactionsがSteamで公開ベータテストを行っています。Kickstarterでバックしていた方は無料で、そうでなくても$15で2人分の参加権を獲得できます。ただKickstarterでの予約とは異なり、この$15ではシングル版は手に入りません。サービス開始後の特典などもなし。プレイ人口がまだ少なく、基本的な調整を繰り返している段階で、しかもいずれ正式公開されれば無料で遊べるわけですから、$15はほぼお布施になるかと思います。
Betaを遊んだ感想。
Stoicがインタビューで語っていた「ターン制ゲームに慣れた人も驚くだろう独特の戦闘システム」とはどんなものか、気になっていました。実際遊んでみると、一見ブラウザゲームのようにシンプルな作りです。使えるのは1プレイヤー6ユニット。チェス盤のような戦場。装備の概念もなし。敵を全滅させれば勝利。

翻る無数の旗のもとに人間と巨人族(Varl)が集結
Renownを賭けて決闘を繰り返す
ユニットの能力値は6つだけ。そのうちもっとも重要なのは、
Strength: HPであり、同時に攻撃力。0で戦闘不能(ユニットが死ぬことはない)。
Armor: ダメージから引く。
敵を攻撃する際は、StrengthとArmor、どちらにダメージを与えるか選べます。
Strengthへのダメージ: 攻撃側Strength-防御側Armor
Armorへのダメージ: ユニットごとに設定された対Armor攻撃力
Strengthを減らして攻撃力を奪うか、それともArmorを削って続く攻撃をより有効にするか。一部の例外を除いて攻撃は必ずヒットし、事前に示された通りのダメージを与えます。

ユニットに名前をつけ、Renownを消費して6つの能力値を高める
一番下の2/11が成長限界で、11点分成長させると上位クラスに昇進
ターン制の戦闘といえば、自ターンで配下のすべての(または任意の)ユニットを動かす方式、もしくは同時行動式が一般的と思います。The Banner Sagaはどっちでもありません。手番で動かせるユニットはひとつ。それがどのユニットになるかは、部隊編成時に決定した行動順で決まります。つまり……
自分の行動順 1,2,3,4,5,6
敵の行動順 A,B,C,D,E,F
だとすると 1,A,2,B,3,C,4,D,5,E,6,F の順に行動します。そしてここが重要なんですが、ユニットが倒れてできた穴には同じチームの次のユニットが入ります。
上の例で敵のD,E,Fを一挙に倒したとすると、以降の行動順は、
1,A,2,B,3,C,4,A,5,B,6,C
なんと残った敵A、B、Cの行動回数が事実上2倍に増えてしまったことに。
このため手近の敵から葬る単純戦法では、後方に控える強力ユニットの行動回数が増えてしまい、かえって不利になる可能性があります。そこでまず攻撃力も兼ねるStrengthをぎりぎりまで削ります。その後、脅威度の高いものはとどめをさしますが、そうでなければあえて放置。
Strength以外で脅威度を決めるものとしては、クラスごとに設定された強力な特殊能力。そしてその使用可能回数を主に示すWillpowerの残り。また、いくらダメージを受けても下がらない対Armor攻撃力。加えて行動順も考えながら、今倒すべきかの判断をくだしていきます。
この仕掛けは確かに独特だと思いました。運の要素をほぼ排除してありながら、どちらが優勢なのか、最後のターンまでなかなか見えません。
ベータ開始当初はやや極端で、ひとり残った弓兵が敵4人を立て続けに射抜いて逆転勝利、といったことが頻繁でしたが、最近ではPillage(残り ひとりの側が一挙に不利になる)システムが導入されています。これについては賛否あるみたいですけれど、今後も不自然さの解消を目指していくそうです。
Sky Strikerの特殊能力: Rain of Arrows
特定タイルに矢を予測撃ち(相手には場所は見えず)
次回の行動までに落下点に敵が足を踏み入れればスタン効果
当たらなくても相手を疑心暗鬼にさせ、特攻を阻止できる
プレイヤーはマッチの勝敗に関わらず、倒した敵ユニットの数だけRenownを得ます。これは新ユニットの雇用や、既存ユニットの成長のための資金になります。成長とはいってもPerkの類を習得できるわけではなく、地味に能力値をあげていくだけ。成長の限界がすぐにやってきますし、クラスチェンジしても劇的に強くなることはありません。ユニットの性能差だけで力押しする、というのは難しそう。
さらにマッチメイクでは、成長度だけでなく腕も考慮して相手が割り振られます(アメリカチェス連盟の使うものと同じELOランキング算出法を採用)。つまり稼いだRenownが勝率にさっぱり直結しない、腕重視のゲームになる予定。
それでRenownを直接購入する人がたくさんでてくるのか、他に金を使わせる仕掛けもいっさいなく、本当に基本無料モデルとして商売が成立するかは非常に疑問です。でも開発者の書き込みによれば、「わかってる。本当に作りたいのはシングル版。戦闘システムの仕上がりに自信があったからFactionsとしての先行公開を考えた。Factionsで大金を稼ぐ気は初めからない」。
Stoicはファンとの意見交換にも非常に熱心で(公式フォーラムの黄色い書き込み)、Biowareではできなかったやり方で、作れなかったものをつくりたいという熱を感じます。
で、面白いのか。
6人チームにどのユニットを何名入れるか、誰を囮に誰を削るか、誰を始末しあるいは生かすか、そこら辺はすごく悩ませてくれます。特殊能力も癖のあるものばかり。適当に発動してもWillpowerを無駄にするだけで、適切な戦術・陣形と合わせて初めて効果を発揮します。
一方、抽象化されたルールと血のほとんど出ない戦場風景には、感情移入の余地があまりありません。当たる・外れるのを祈ったり、「こいつには皮鎧と弓を持たせて森の高台に潜ませよう」といったジオラマ人形遊び的楽しさがないのはさびしくもあります。ユニットの成長関係もあっさりしたもの。
ストラテジーRPGというジャンルのなかでも、ストラテジーの方に強く比重を置いていると思いました。1手ごとの思考は最大1分、1マッチは20~40分ほど。その間、先の先を読むことだけに集中し、勝てばいい気分ですが、負けると……。勝敗に関わらずRenownが手に入るとはいえ、ランキングもあるので大雑把には遊べません。良くも悪くも疲れます。
私は負けてばかりなので、Factionsに関してはプレイ意欲がどこまで持続するかわかりません。もともとThe Banner Sagaをバックしたのはシングルを遊びたいから。完全に対人戦向きと思えるこのシステムを使ってどんなシングルに仕上げるのか、The Banner Sagaに対する興味はそちらの方に移りました。Heroes of Might & MagicやDesciples、ファイアーエムブレムなど、既存の有名ストラテジーRPGとはかなり違ったものになるんじゃないかと。
そのシングルプレイ版の情報
The Banner Saga 1-3
シングルプレイ専用のターン制ストラテジーRPG。破滅を迎えた世界で、バイキング風の部族が苦難の旅を続ける。3部作の1作目が2013年にリリース予定。
The Banner Saga: Factions
同じ背景世界、戦闘システムを使ったオンラインゲーム。シングル版に先行して今年末に公開予定。多彩なユニットで6人の部隊を編成し、他プレイヤーと1対1で戦う。新XCOMのマルチと似た形式。ただ戦闘を通じ得られるRenownでユニットを成長させていくのが違い。プレイは無料だがRenownの直接購入もできる。シングル版開発資金の増強と同時に、システムなどがうまく機能するか試す場にもしたいとのこと。
現在、後者のThe Banner Saga: FactionsがSteamで公開ベータテストを行っています。Kickstarterでバックしていた方は無料で、そうでなくても$15で2人分の参加権を獲得できます。ただKickstarterでの予約とは異なり、この$15ではシングル版は手に入りません。サービス開始後の特典などもなし。プレイ人口がまだ少なく、基本的な調整を繰り返している段階で、しかもいずれ正式公開されれば無料で遊べるわけですから、$15はほぼお布施になるかと思います。
Betaを遊んだ感想。
Stoicがインタビューで語っていた「ターン制ゲームに慣れた人も驚くだろう独特の戦闘システム」とはどんなものか、気になっていました。実際遊んでみると、一見ブラウザゲームのようにシンプルな作りです。使えるのは1プレイヤー6ユニット。チェス盤のような戦場。装備の概念もなし。敵を全滅させれば勝利。

翻る無数の旗のもとに人間と巨人族(Varl)が集結
Renownを賭けて決闘を繰り返す
ユニットの能力値は6つだけ。そのうちもっとも重要なのは、
Strength: HPであり、同時に攻撃力。0で戦闘不能(ユニットが死ぬことはない)。
Armor: ダメージから引く。
敵を攻撃する際は、StrengthとArmor、どちらにダメージを与えるか選べます。
Strengthへのダメージ: 攻撃側Strength-防御側Armor
Armorへのダメージ: ユニットごとに設定された対Armor攻撃力
Strengthを減らして攻撃力を奪うか、それともArmorを削って続く攻撃をより有効にするか。一部の例外を除いて攻撃は必ずヒットし、事前に示された通りのダメージを与えます。

ユニットに名前をつけ、Renownを消費して6つの能力値を高める
一番下の2/11が成長限界で、11点分成長させると上位クラスに昇進
ターン制の戦闘といえば、自ターンで配下のすべての(または任意の)ユニットを動かす方式、もしくは同時行動式が一般的と思います。The Banner Sagaはどっちでもありません。手番で動かせるユニットはひとつ。それがどのユニットになるかは、部隊編成時に決定した行動順で決まります。つまり……
自分の行動順 1,2,3,4,5,6
敵の行動順 A,B,C,D,E,F
だとすると 1,A,2,B,3,C,4,D,5,E,6,F の順に行動します。そしてここが重要なんですが、ユニットが倒れてできた穴には同じチームの次のユニットが入ります。
上の例で敵のD,E,Fを一挙に倒したとすると、以降の行動順は、
1,A,2,B,3,C,4,A,5,B,6,C
なんと残った敵A、B、Cの行動回数が事実上2倍に増えてしまったことに。
このため手近の敵から葬る単純戦法では、後方に控える強力ユニットの行動回数が増えてしまい、かえって不利になる可能性があります。そこでまず攻撃力も兼ねるStrengthをぎりぎりまで削ります。その後、脅威度の高いものはとどめをさしますが、そうでなければあえて放置。
Strength以外で脅威度を決めるものとしては、クラスごとに設定された強力な特殊能力。そしてその使用可能回数を主に示すWillpowerの残り。また、いくらダメージを受けても下がらない対Armor攻撃力。加えて行動順も考えながら、今倒すべきかの判断をくだしていきます。
この仕掛けは確かに独特だと思いました。運の要素をほぼ排除してありながら、どちらが優勢なのか、最後のターンまでなかなか見えません。
ベータ開始当初はやや極端で、ひとり残った弓兵が敵4人を立て続けに射抜いて逆転勝利、といったことが頻繁でしたが、最近ではPillage(残り ひとりの側が一挙に不利になる)システムが導入されています。これについては賛否あるみたいですけれど、今後も不自然さの解消を目指していくそうです。

Sky Strikerの特殊能力: Rain of Arrows
特定タイルに矢を予測撃ち(相手には場所は見えず)
次回の行動までに落下点に敵が足を踏み入れればスタン効果
当たらなくても相手を疑心暗鬼にさせ、特攻を阻止できる
プレイヤーはマッチの勝敗に関わらず、倒した敵ユニットの数だけRenownを得ます。これは新ユニットの雇用や、既存ユニットの成長のための資金になります。成長とはいってもPerkの類を習得できるわけではなく、地味に能力値をあげていくだけ。成長の限界がすぐにやってきますし、クラスチェンジしても劇的に強くなることはありません。ユニットの性能差だけで力押しする、というのは難しそう。
さらにマッチメイクでは、成長度だけでなく腕も考慮して相手が割り振られます(アメリカチェス連盟の使うものと同じELOランキング算出法を採用)。つまり稼いだRenownが勝率にさっぱり直結しない、腕重視のゲームになる予定。
それでRenownを直接購入する人がたくさんでてくるのか、他に金を使わせる仕掛けもいっさいなく、本当に基本無料モデルとして商売が成立するかは非常に疑問です。でも開発者の書き込みによれば、「わかってる。本当に作りたいのはシングル版。戦闘システムの仕上がりに自信があったからFactionsとしての先行公開を考えた。Factionsで大金を稼ぐ気は初めからない」。
Stoicはファンとの意見交換にも非常に熱心で(公式フォーラムの黄色い書き込み)、Biowareではできなかったやり方で、作れなかったものをつくりたいという熱を感じます。
で、面白いのか。
6人チームにどのユニットを何名入れるか、誰を囮に誰を削るか、誰を始末しあるいは生かすか、そこら辺はすごく悩ませてくれます。特殊能力も癖のあるものばかり。適当に発動してもWillpowerを無駄にするだけで、適切な戦術・陣形と合わせて初めて効果を発揮します。
一方、抽象化されたルールと血のほとんど出ない戦場風景には、感情移入の余地があまりありません。当たる・外れるのを祈ったり、「こいつには皮鎧と弓を持たせて森の高台に潜ませよう」といったジオラマ人形遊び的楽しさがないのはさびしくもあります。ユニットの成長関係もあっさりしたもの。
ストラテジーRPGというジャンルのなかでも、ストラテジーの方に強く比重を置いていると思いました。1手ごとの思考は最大1分、1マッチは20~40分ほど。その間、先の先を読むことだけに集中し、勝てばいい気分ですが、負けると……。勝敗に関わらずRenownが手に入るとはいえ、ランキングもあるので大雑把には遊べません。良くも悪くも疲れます。
私は負けてばかりなので、Factionsに関してはプレイ意欲がどこまで持続するかわかりません。もともとThe Banner Sagaをバックしたのはシングルを遊びたいから。完全に対人戦向きと思えるこのシステムを使ってどんなシングルに仕上げるのか、The Banner Sagaに対する興味はそちらの方に移りました。Heroes of Might & MagicやDesciples、ファイアーエムブレムなど、既存の有名ストラテジーRPGとはかなり違ったものになるんじゃないかと。
そのシングルプレイ版の情報
- 基本となる戦闘システムは、Factionsとシングル版で変わらない。
- ただしシングル版では、戦闘で倒れたユニットがしばらく使えなくなるそうです(JA2やXCOMの入院のような感じ?)。
- シングル版のみの種族、特殊能力が登場(おそらく敵として)。
- FactionsのベテランもてこずるようなバランスとAIを目指す。
- シングル版をクリアすればFactionsで恩恵がある。その逆はない。
- Varlをはじめとして半人半馬など人間でない種族も登場する。
- 分身キャラクターを作成することはできない。主人公格が何人かいて、物語の進展とともに交代していく。