球技+殴り合い+サイコロ=ブラッドボウル
最近はBlood Bowl Legendary Editionを遊んでいます。ルールを理解するにつれ、俄然面白くなってきました。元ネタのWarhammerやアメフトをほとんど知らず、長いこと購入をためらっていたんですが、もっと早く買っておけばよかったなと思います。前知識なんてまったく要りませんでした。
ジャンルは一応スポーツゲームになるんでしょうか。本当に一応。なにしろターン制アメフトゲームというだけでもユニークすぎるのに、選手はファンタジー世界の住人で、買収から殺人までなんでもありです。エルフやオークはわかるとしても、ミイラ男や混沌の化け物が真剣にボールを奪い合う光景は、なかなか普通ではありません。ゴブリン審判が笛を吹き、チアリーダーのスケルトンが腰をくねらせ、吸血鬼とオーガーのコンビが楽しそうに実況し…。徹底した悪ノリで、アメフト風の架空スポーツBlood Bowlの試合と、それを取り巻く環境を再現しています。
コンセプトこそ非常にバカバカしいんですが、二十数年の歴史を持つボードゲーム『Blood Bowl』の公式PC版なので、作っている人達は大真面目のようです。開発はフランスの会社Cyanide Studio。ここは以前、Blood Bowlに似たゲームを勝手に作って、ボードゲーム版発売元から訴えられた過去があります。両者は結局和解し、Cyanide Studioにはオフィシャルゲームの制作権が与えられました。そしてできあがったPC版は、ボードゲームの最新ルール(Competition Rules)にほぼ準拠、すべての追加変更部分はオプション扱い。オリジナルの作者とファンに、非常に気を使って作られています。
経緯としては、まず2009年にシリーズ1作目のBlood Bowlが発売されました。この時はボードゲーム版の21種族に対して8種族しかなかったんですが、パッチで1種族追加されます。パッチ適用したものをタイトルを変えて販売したのがDark Elves Edition。2010年のLegendary Editionでは、さらに11種族が追加されたほか、様々な改良が施されています。Legendary Editionは、以前のBlood Bowlとは互換性のないまったくの新作です。拡張パックではありませんし、Dark Elves Editionからアップグレードすることもできません。
日本語版は出ていません。ですがMorrowindの翻訳でも有名な英二鹿さんが、日本語化を進めておられます。
元のボードゲームは、ミニチュアとサイコロを使って遊ぶよう設計されたもので、作られたのも相当昔です。それを外見だけ最近のゲーム風に、中身は細かいルールまでそのまんま忠実に移植しています。ファンタジーアメフトという題材の特殊さだけでなく、まったくPCゲーム的ではない発想で作られたルールが、やけに新鮮に感じました。
基本的なこと:
つまりターンが回ってきても、選手全員を動かせるとは限りません。簡単な行為でも約17%で失敗ですから、一手ごとにターン終了のリスクがあります。欲張っていろいろやろうとすればするほど、確率が上がっていきます。誰に何をどういう順番でやらせるか、またあえてやらせないか。どこかで危険を冒さないとボールが前に進みませんが、結果失敗すれば、中途半端な布陣のまま敵ターンを迎えることになります。必要なリスクとそうでないものの見極めに、非常に悩まされます。しかも思考に使えるのは1ターン最大4分。
ダメージの処理の仕方も変わっています。ヒットポイントや命中率といった仕掛けを使いません。ブロック(このゲームでの攻撃)を行う場合には、ブロックダイスと呼ばれる特殊サイコロの出番です。まず双方の筋力を比較して、いくつサイコロを振るか決めます。サイコロの各面には「1マス吹っ飛ばす」「攻撃側ダウン」「防御側ダウン」などのイラストが描かれており、これがそのまま攻撃結果になります。ダウンした選手は、後のターンで「立ち上がる」まで行動不能。ダウン時に低確率で負傷退場/死亡しますが、それさえ免れれば蓄積するダメージはありません。
ブロックダイスの出目: 6面体。実際には絵が描いてあるだけで数字はありません。
1. 攻撃側ダウン
2. 双方ダウン(スキルで回避可能)
3. 1マス吹っ飛ばす
4. 1マス吹っ飛ばす
5. 防御側ダウン(スキルで回避可能)
6. 防御側ダウン(問答無用)

ダウン時の負傷/死亡判定: 2D6=6面サイコロ2個
1. ダウンしたら2D6を振る。出目が選手の装甲値を上回れば負傷(2へ)。
2. もう一度2D6。7以下はダウン時間が延びる。8以上なら一時退場。10以上なら退場+重傷(3へ)。
3. 重傷の場合はさらに1D6。4で次の試合出場不可、5は永久に能力低下、6を出したら死亡。
例: 人間選手(装甲値8)がダウン。約28%で負傷。退場確率は約11%。死亡は約2%。
攻撃の結果ダウン/負傷/死亡する可能性は、攻撃した側された側、両方にあります。巨大なトロールとひ弱なハーフリングの違いは、その確率だけです。腕っぷしが強いからと言って攻撃に頼りすぎると、思わぬしっぺ返しを食らいます。逆に弱い選手が、袋叩きを無傷で生き延びることもあります。
重要な点として、移動してから攻撃できるのは1ターンひとりだけです。他の選手は敵が目の前にいない限り攻撃できません。ということは、敵のターンでどのぐらい攻撃を受けるかコントロールできるわけです。そういうこともあって、暴力ばかりの単純戦法ではそうそう勝てません。マークしてパスを通りづらくしたり、囮で敵をかく乱したり、壁を作って守るといった球技らしい戦術が、攻撃と同じかそれ以上に有効になります。
すべてがサイコロ次第になりすぎないよう、Rerollポイントのルールがあります。訓練に金をかけたり、ファンに愛されるチームはこのポイントが高くなるので、チームの底力みたいなものでしょうか。Rerollポイント1点を使って、気に入らないサイコロを1回振り直すことができます。あくまで振り直せるだけで、成功が約束されるわけではありません。
Blood Bowlの試合に勝つためには、運と戦術の両方が必要になります。ストラテジーゲームというジャンルで、ここまで展開に運を絡ませるゲームは珍しいんじゃないでしょうか。実際のスポーツ同様に、コーチができるのは指示を出すところまで。あとは選手の能力を信じて、祈りながらサイコロを振るしかありません。神がかり的なロングパスが決まったかと思えば、あと1マスでタッチダウンなのに選手がいきなりコケて台無しになったり。1ターン先がどうなっているかは、まったくもって予測不可能です。
試合を楽しむだけでなく、Blood Bowlはチーム運営ゲームの側面も持っています。試合前に、まず選手を雇い入れてチームを編成します。各選手は固有の名前、能力値、スキルを持っていて、成長したり、負傷したり、ときには死んでしまったり。彼らとともに試合を重ね、金を稼いでチームを強化し、長い大会の頂点を目指します。成長要素があるので実力の異なるチーム同士の対戦は頻繁ですが、そこは試合前の準備資金(Petty Cash、傭兵の雇用や審判買収に使う)にハンデをつけてバランスを取っています。
もし今こういう題材をPCゲームとして作るなら、どうまかり間違ってもターン制にはならないでしょう。タックルの快感や、ディフェンスをすり抜けるスリルが欲しいなら、そりゃあんたアクションゲームを作りなよとなるはずです。マス目移動、手番交代、サイコロ振りのようなテンポの悪い手順は、スポーツの再現にまったく向いていないように思えます。でも実際に遊んでみると、意外とそうでもありませんでした。ここ一番という試合を迎えたときなんか、大味で不自然に思えたルールが、急になめらかに動き出します。
ボードゲーム版にはいまだに熱心なプレイヤーが大勢いるそうですが、その理由がちょっとだけわかったような気がしました。理解しやすく、感情移入しやすく、ハラハラしっぱなしで、悩みどころは無数にあります。ボードゲームという制約の多い環境で、長年をかけ熟成されてきたルールなんだろうなと思います。
ここまではボードゲーム版に忠実なクラシックモードの感想でした。もうひとつのBlitzモードでは、様々な追加ルールのなかから好きなものだけ選んで遊ぶことができます。Cyanideオリジナルのルールと、Competition Rulesのチーム運営関係の選択ルールをベースにしているものが半々でしょうか(ルールブックを読み直したら、勘違いのようです。ほとんどCyanideオリジナルなのかな)。スポンサーとの契約やトレーニング、装備アイテム、選手寿命や契約金交渉などなど。クラシックに比べ試合以外の場で考えるべき要素が増えており、監督気分をさらに満喫できます。
元のボードゲームを遊んだことがないからかもしれませんが、トレーニングのミニゲーム以外は、ゲームの他の部分とうまく馴染んでいると思いました。ただマルチではほとんどの試合がクラシックモードで行われているようです。追加ルールをフルに楽しめるのは、主にシングルになりそう(もしくは仲間を集めてプライベートリーグを作るか)。
なぜかゲームをターン制からリアルタイムに変更するオプションもあります。RTS風の操作になります。Cyanideが昔作ったBlood BowlっぽいゲームはRTSだったようですが、彼らとしてはリアルタイム操作が好みなんでしょうか。2、3度試した限りでは、ターン制と比べると魅力が薄い気がしました。正直言って、時間を割いてまで入れる必要があったのかどうか。でもルール自体はターン制とだいたい同じ、見えないだけで内部でサイコロを振っているのも変わりません。Spaceでポーズをかけて悩むこともできるので、一応らしさは残っています。
シングルプレイは、チュートリアルやシングルマッチの他に、3つのモードが用意されています。(1)ひとつの大会のチャンピオンを目指すCompetitionモード。(2)各地の大会を転戦していくスケールの大きなCampaignモード。(3)特殊な試合状況で課題をこなしていく、長い長いチュートリアルとも言えそうなStoryモード。どれも一周するだけで相当時間がかかりそうです。種族やルールを変えてリプレイできることを考えれば、ものすごいボリュームです。
問題になってくるのはAIの出来ですが。Blood Bowl第1作は、AIがかなりお粗末だったようです。ネット上を探すと、「Blood Bowl のAIはどうしようもない、寝てても勝てる」というような酷評がたくさん見つかります。アップグレード版のLegendary Editionでは、AIも多少改良されています。物足りないのは確かですけれど、寝ていては勝てません。
AIは、壁を作ってボールを守りつつディフェンスを蹴散らしながら前進する、という基本プレイはきちんとこなします。成功率が高いと見ればパスも試みます。守りがいい加減だと、得点を許すこともしばしばです。しかし残念ながら、AIは基本的なプレイ以上のことはほとんどできません。臨機応変な判断ができず、行動がワンパターンです。特殊なスキルの一部を扱えなかったり、うまく対応できないという欠点もあります。取れる戦術が幅広く、人間ですら悩みまくるゲームだけにAI作りは難しいんでしょうが、残念です。
シングルプレイでは、AIの至らなさを補うため、プレイヤー以外のチームに大きなアドバンテージが与えられています。潤沢な資金を持ち、強力な選手を揃え、しかも大会中すごい勢いで成長していくので、能力値勝負では負けてしまいます。また運の要素が強いゲームであることが、かなり救いになっていると思います。AI自体はいつも似たような行動を取るとしても、試合の展開は同じにはなりません。さらに20種族のチームが計100以上あるので、対戦相手は毎回変わります。簡単だったり、単調でつまらないとは、今のところ感じないです。
やはりと言うか、マルチはひたすら楽しいです。比較的マイナーなゲームにも関わらず、マルチプレイ環境がきちんと整備されています。アカウントを作成すると、公式サーバーでの自動マッチングと戦績管理、作成チームの保存サービスなどが無料で使えます。
素晴らしいことに、マルチでもシングル同様、オリジナルチームを運営しながらの戦いになります。相手はAIとは比較にならないほど狡猾で残忍な人間たちですから、すべてのターンでまったく気が抜けません。負傷者を出しすぎれば次の試合が苦しくなりますが、腰が引けていると簡単にタッチダウンを決められてしまいます。厳しい試合を重ねていくうち、選手への思い入れはますます深くなっていきます。そんな彼らがつまらない失敗で死んでしまったときのショックと言ったら…。シングルも楽しいと感じましたが、マルチの緊張感と興奮はやはり別物ですね。ボードゲームではおそらく実現不可能なスケールの大会を、手軽に、存分に楽しむことが出来ます。
ほとんどのプレイヤーは、自由に参加可能な公式オープンリーグで遊んでいるようです。チームを作ってリーグ参加ボタンを押したら、自動マッチメイク機能で対戦相手が見つかるのを待つだけ。試合の結果に応じてランキングが上下します。物足りなくなったら、他にも様々なルールのリーグが、公式、プライベート、たくさん見つかります。身内限定のものも多いですが、トーナメント方式、総当り戦などなど。自分で作って人を集めることもできます。
試合時間は、時間制限が4分/ターンだと1時間半程度。2分/ターンだと45分弱。対戦ゲームとしてはちょっと長めでしょうか。でもすべての手順に制限時間があるため、それ以上長引くことはありません。終わる時間をだいたい推測できるので、寝る前に対戦を1回だけ、というのがやりやすいゲームです。最近は常時100~600人ほどのプレイヤーが接続しているようです。ターン制なので世界中誰とでもラグを気にせず遊べます。
気づいた難点は、日本時間夜にはプレイヤー数が少ない点(深夜~朝にピークが来るようです)。チーム戦力によっては、自動マッチングにえらく時間がかかる点(その場合誰かに直接試合を申し込めます)。人によっては不安定でクラッシュが多いとか(私は一度もありませんありました…。でも多いというほどではないです)。それとPC版の追加ルールやリアルタイム制など、クラシックモード以外で遊ぼうとすると相手が見つかりづらいと思います。
ジャンルは一応スポーツゲームになるんでしょうか。本当に一応。なにしろターン制アメフトゲームというだけでもユニークすぎるのに、選手はファンタジー世界の住人で、買収から殺人までなんでもありです。エルフやオークはわかるとしても、ミイラ男や混沌の化け物が真剣にボールを奪い合う光景は、なかなか普通ではありません。ゴブリン審判が笛を吹き、チアリーダーのスケルトンが腰をくねらせ、吸血鬼とオーガーのコンビが楽しそうに実況し…。徹底した悪ノリで、アメフト風の架空スポーツBlood Bowlの試合と、それを取り巻く環境を再現しています。
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ブラッドボウルとは: 膨らましたブタの膀胱を用いて相手チームと得点を競い合う旧世界の球技である。ルールはアメリカンフットボールを原型としているが、著しく知能の低い選手および観客に配慮して単純化を重ねた結果、今日の形となった。ランプレイ、パスプレイ、ラフプレイ、あるいは金の力によって相手チームのエンドゾーンにボールを運べば1ポイント。試合終了時の合計ポイントにより勝者を決定する。相手選手への無意味なタックル、暴言、ボールに絡まない暗殺、むさぼり食う、戦車で轢く、爆弾を投げる、その他の危険な行為は稀に反則とみなされる。万一試合中に死者が出た場合、その場に速やかに埋葬すること。また試合結果が不服ならファンはコーチを食べても良い。近年ブラッドボウルの人気は高まる一方で、ケーバルヴィジョンによる試合中継が始まると、各地の墓場からファンが蘇り、いつもは冒険者でにぎわうダンジョンもひっそりと静まり返ると言う。 |
コンセプトこそ非常にバカバカしいんですが、二十数年の歴史を持つボードゲーム『Blood Bowl』の公式PC版なので、作っている人達は大真面目のようです。開発はフランスの会社Cyanide Studio。ここは以前、Blood Bowlに似たゲームを勝手に作って、ボードゲーム版発売元から訴えられた過去があります。両者は結局和解し、Cyanide Studioにはオフィシャルゲームの制作権が与えられました。そしてできあがったPC版は、ボードゲームの最新ルール(Competition Rules)にほぼ準拠、すべての追加変更部分はオプション扱い。オリジナルの作者とファンに、非常に気を使って作られています。
経緯としては、まず2009年にシリーズ1作目のBlood Bowlが発売されました。この時はボードゲーム版の21種族に対して8種族しかなかったんですが、パッチで1種族追加されます。パッチ適用したものをタイトルを変えて販売したのがDark Elves Edition。2010年のLegendary Editionでは、さらに11種族が追加されたほか、様々な改良が施されています。Legendary Editionは、以前のBlood Bowlとは互換性のないまったくの新作です。拡張パックではありませんし、Dark Elves Editionからアップグレードすることもできません。
日本語版は出ていません。ですがMorrowindの翻訳でも有名な英二鹿さんが、日本語化を進めておられます。
どんなゲームか
元のボードゲームは、ミニチュアとサイコロを使って遊ぶよう設計されたもので、作られたのも相当昔です。それを外見だけ最近のゲーム風に、中身は細かいルールまでそのまんま忠実に移植しています。ファンタジーアメフトという題材の特殊さだけでなく、まったくPCゲーム的ではない発想で作られたルールが、やけに新鮮に感じました。
基本的なこと:
- プレイヤーはコーチ(監督)。1チーム11人+控え5人。2チームで対戦
- ターン制。1試合16ターン(前半8+後半8)
- ボールの移動に使えるのは手だけ。持って走るか、パスをつなぐか。
- ボールを持って敵のエンドゾーンに走りこむ=タッチダウンで1点。
- ブロックと称して相手を殴り倒しても良い。倒れた選手への追い打ちのみ、反則の可能性
つまりターンが回ってきても、選手全員を動かせるとは限りません。簡単な行為でも約17%で失敗ですから、一手ごとにターン終了のリスクがあります。欲張っていろいろやろうとすればするほど、確率が上がっていきます。誰に何をどういう順番でやらせるか、またあえてやらせないか。どこかで危険を冒さないとボールが前に進みませんが、結果失敗すれば、中途半端な布陣のまま敵ターンを迎えることになります。必要なリスクとそうでないものの見極めに、非常に悩まされます。しかも思考に使えるのは1ターン最大4分。
ダメージの処理の仕方も変わっています。ヒットポイントや命中率といった仕掛けを使いません。ブロック(このゲームでの攻撃)を行う場合には、ブロックダイスと呼ばれる特殊サイコロの出番です。まず双方の筋力を比較して、いくつサイコロを振るか決めます。サイコロの各面には「1マス吹っ飛ばす」「攻撃側ダウン」「防御側ダウン」などのイラストが描かれており、これがそのまま攻撃結果になります。ダウンした選手は、後のターンで「立ち上がる」まで行動不能。ダウン時に低確率で負傷退場/死亡しますが、それさえ免れれば蓄積するダメージはありません。
双方の筋力を比較 | ブロックダイスの数 | どの出目を使うかの選択権 |
攻撃側が2倍以上高い | 3個 | 攻撃側 |
攻撃側>防御側 | 2個 | 攻撃側 |
同じ | 1個 | - |
攻撃側<防御側 | 2個 | 防御側 |
防御側が2倍以上高い | 3個 | 防御側 |
ブロックダイスの出目: 6面体。実際には絵が描いてあるだけで数字はありません。
1. 攻撃側ダウン
2. 双方ダウン(スキルで回避可能)
3. 1マス吹っ飛ばす
4. 1マス吹っ飛ばす
5. 防御側ダウン(スキルで回避可能)
6. 防御側ダウン(問答無用)

ダウン時の負傷/死亡判定: 2D6=6面サイコロ2個
1. ダウンしたら2D6を振る。出目が選手の装甲値を上回れば負傷(2へ)。
2. もう一度2D6。7以下はダウン時間が延びる。8以上なら一時退場。10以上なら退場+重傷(3へ)。
3. 重傷の場合はさらに1D6。4で次の試合出場不可、5は永久に能力低下、6を出したら死亡。
例: 人間選手(装甲値8)がダウン。約28%で負傷。退場確率は約11%。死亡は約2%。
攻撃の結果ダウン/負傷/死亡する可能性は、攻撃した側された側、両方にあります。巨大なトロールとひ弱なハーフリングの違いは、その確率だけです。腕っぷしが強いからと言って攻撃に頼りすぎると、思わぬしっぺ返しを食らいます。逆に弱い選手が、袋叩きを無傷で生き延びることもあります。
重要な点として、移動してから攻撃できるのは1ターンひとりだけです。他の選手は敵が目の前にいない限り攻撃できません。ということは、敵のターンでどのぐらい攻撃を受けるかコントロールできるわけです。そういうこともあって、暴力ばかりの単純戦法ではそうそう勝てません。マークしてパスを通りづらくしたり、囮で敵をかく乱したり、壁を作って守るといった球技らしい戦術が、攻撃と同じかそれ以上に有効になります。
すべてがサイコロ次第になりすぎないよう、Rerollポイントのルールがあります。訓練に金をかけたり、ファンに愛されるチームはこのポイントが高くなるので、チームの底力みたいなものでしょうか。Rerollポイント1点を使って、気に入らないサイコロを1回振り直すことができます。あくまで振り直せるだけで、成功が約束されるわけではありません。
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ピッチは15×26マス。器用なチームはパスをつなぎ、そうでないチームはボール持ちを護衛しながら、左右端のエンドゾーンを目指す。チームの特性を活かし、攻守のバランスを取り、相手の戦術を出し抜き、そのうえ運を味方につけなければ得点できない。同じ距離のはずなのに、敵のエンドゾーンだけやけに遠いんですが…。 |
Blood Bowlの試合に勝つためには、運と戦術の両方が必要になります。ストラテジーゲームというジャンルで、ここまで展開に運を絡ませるゲームは珍しいんじゃないでしょうか。実際のスポーツ同様に、コーチができるのは指示を出すところまで。あとは選手の能力を信じて、祈りながらサイコロを振るしかありません。神がかり的なロングパスが決まったかと思えば、あと1マスでタッチダウンなのに選手がいきなりコケて台無しになったり。1ターン先がどうなっているかは、まったくもって予測不可能です。
試合を楽しむだけでなく、Blood Bowlはチーム運営ゲームの側面も持っています。試合前に、まず選手を雇い入れてチームを編成します。各選手は固有の名前、能力値、スキルを持っていて、成長したり、負傷したり、ときには死んでしまったり。彼らとともに試合を重ね、金を稼いでチームを強化し、長い大会の頂点を目指します。成長要素があるので実力の異なるチーム同士の対戦は頻繁ですが、そこは試合前の準備資金(Petty Cash、傭兵の雇用や審判買収に使う)にハンデをつけてバランスを取っています。
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森エルフチームのチアリーダー。種族ごとに異なる愛らしい(おぞましい)生命体(非生命体)が、一心不乱に踊り続けて試合を盛り上げる。チアリーダーの数は試合展開にも多少影響。これに限らず、ファンやアシスタントコーチといったピッチの外のあれこれも、簡単ながらルール化されている。 |
もし今こういう題材をPCゲームとして作るなら、どうまかり間違ってもターン制にはならないでしょう。タックルの快感や、ディフェンスをすり抜けるスリルが欲しいなら、そりゃあんたアクションゲームを作りなよとなるはずです。マス目移動、手番交代、サイコロ振りのようなテンポの悪い手順は、スポーツの再現にまったく向いていないように思えます。でも実際に遊んでみると、意外とそうでもありませんでした。ここ一番という試合を迎えたときなんか、大味で不自然に思えたルールが、急になめらかに動き出します。
ボードゲーム版にはいまだに熱心なプレイヤーが大勢いるそうですが、その理由がちょっとだけわかったような気がしました。理解しやすく、感情移入しやすく、ハラハラしっぱなしで、悩みどころは無数にあります。ボードゲームという制約の多い環境で、長年をかけ熟成されてきたルールなんだろうなと思います。
PC版で追加されているルールなど
ここまではボードゲーム版に忠実なクラシックモードの感想でした。もうひとつのBlitzモードでは、様々な追加ルールのなかから好きなものだけ選んで遊ぶことができます。
元のボードゲームを遊んだことがないからかもしれませんが、トレーニングのミニゲーム以外は、ゲームの他の部分とうまく馴染んでいると思いました。ただマルチではほとんどの試合がクラシックモードで行われているようです。追加ルールをフルに楽しめるのは、主にシングルになりそう(もしくは仲間を集めてプライベートリーグを作るか)。
なぜかゲームをターン制からリアルタイムに変更するオプションもあります。RTS風の操作になります。Cyanideが昔作ったBlood BowlっぽいゲームはRTSだったようですが、彼らとしてはリアルタイム操作が好みなんでしょうか。2、3度試した限りでは、ターン制と比べると魅力が薄い気がしました。正直言って、時間を割いてまで入れる必要があったのかどうか。でもルール自体はターン制とだいたい同じ、見えないだけで内部でサイコロを振っているのも変わりません。Spaceでポーズをかけて悩むこともできるので、一応らしさは残っています。
シングルプレイとAI
シングルプレイは、チュートリアルやシングルマッチの他に、3つのモードが用意されています。(1)ひとつの大会のチャンピオンを目指すCompetitionモード。(2)各地の大会を転戦していくスケールの大きなCampaignモード。(3)特殊な試合状況で課題をこなしていく、長い長いチュートリアルとも言えそうなStoryモード。どれも一周するだけで相当時間がかかりそうです。種族やルールを変えてリプレイできることを考えれば、ものすごいボリュームです。
問題になってくるのはAIの出来ですが。Blood Bowl第1作は、AIがかなりお粗末だったようです。ネット上を探すと、「Blood Bowl のAIはどうしようもない、寝てても勝てる」というような酷評がたくさん見つかります。アップグレード版のLegendary Editionでは、AIも多少改良されています。物足りないのは確かですけれど、寝ていては勝てません。
AIは、壁を作ってボールを守りつつディフェンスを蹴散らしながら前進する、という基本プレイはきちんとこなします。成功率が高いと見ればパスも試みます。守りがいい加減だと、得点を許すこともしばしばです。しかし残念ながら、AIは基本的なプレイ以上のことはほとんどできません。臨機応変な判断ができず、行動がワンパターンです。特殊なスキルの一部を扱えなかったり、うまく対応できないという欠点もあります。取れる戦術が幅広く、人間ですら悩みまくるゲームだけにAI作りは難しいんでしょうが、残念です。
シングルプレイでは、AIの至らなさを補うため、プレイヤー以外のチームに大きなアドバンテージが与えられています。潤沢な資金を持ち、強力な選手を揃え、しかも大会中すごい勢いで成長していくので、能力値勝負では負けてしまいます。また運の要素が強いゲームであることが、かなり救いになっていると思います。AI自体はいつも似たような行動を取るとしても、試合の展開は同じにはなりません。さらに20種族のチームが計100以上あるので、対戦相手は毎回変わります。簡単だったり、単調でつまらないとは、今のところ感じないです。
![]() |
スポーツマン精神溢れるひとコマ。アマゾネスにドワーフのローラー戦車が迫る。一応反則ではあるが、試合前に一稼ぎしてしまったのか、審判はこちらを見ようともしない。血が流れるたびに大喜びする実況。雇った魔法使いが観客席からファイアボールを唱えるのは「フェアプレイ」。そんなゲームです。 |
マルチプレイが抜群に面白い
やはりと言うか、マルチはひたすら楽しいです。比較的マイナーなゲームにも関わらず、マルチプレイ環境がきちんと整備されています。アカウントを作成すると、公式サーバーでの自動マッチングと戦績管理、作成チームの保存サービスなどが無料で使えます。
素晴らしいことに、マルチでもシングル同様、オリジナルチームを運営しながらの戦いになります。相手はAIとは比較にならないほど狡猾で残忍な人間たちですから、すべてのターンでまったく気が抜けません。負傷者を出しすぎれば次の試合が苦しくなりますが、腰が引けていると簡単にタッチダウンを決められてしまいます。厳しい試合を重ねていくうち、選手への思い入れはますます深くなっていきます。そんな彼らがつまらない失敗で死んでしまったときのショックと言ったら…。シングルも楽しいと感じましたが、マルチの緊張感と興奮はやはり別物ですね。ボードゲームではおそらく実現不可能なスケールの大会を、手軽に、存分に楽しむことが出来ます。
ほとんどのプレイヤーは、自由に参加可能な公式オープンリーグで遊んでいるようです。チームを作ってリーグ参加ボタンを押したら、自動マッチメイク機能で対戦相手が見つかるのを待つだけ。試合の結果に応じてランキングが上下します。物足りなくなったら、他にも様々なルールのリーグが、公式、プライベート、たくさん見つかります。身内限定のものも多いですが、トーナメント方式、総当り戦などなど。自分で作って人を集めることもできます。
試合時間は、時間制限が4分/ターンだと1時間半程度。2分/ターンだと45分弱。対戦ゲームとしてはちょっと長めでしょうか。でもすべての手順に制限時間があるため、それ以上長引くことはありません。終わる時間をだいたい推測できるので、寝る前に対戦を1回だけ、というのがやりやすいゲームです。最近は常時100~600人ほどのプレイヤーが接続しているようです。ターン制なので世界中誰とでもラグを気にせず遊べます。
気づいた難点は、日本時間夜にはプレイヤー数が少ない点(深夜~朝にピークが来るようです)。チーム戦力によっては、自動マッチングにえらく時間がかかる点(その場合誰かに直接試合を申し込めます)。人によっては不安定でクラッシュが多いとか(
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